第2報告 『“日本興亜損保”新発足の陰に、今職場は』

日本興亜損害保険  田崎純人

 ご紹介いただきました日本興亜損害保険に働く田崎純人と申します。

 私は昨年9月28日、全損保日火支部執行委員会の全損保脱退「緊急声明」を見て、全国の日火支部組合員4000名余に事実を知らせるとともに次のように呼びかけました。

『私は昭和49年大阪海上部に入社し、青年婦人部活動を通じて労働組合を知り、今日まで26年間一貫して分会役員をやってきました。私はこの間、日火の職場が少しでも働きやすい職場にするため組合員の利益を守って微力ながら努力してきました。…この秋には人事制度をはじめ、新会社の骨格が提案されようとしています。労働組合には私たちの雇用・労働条件を守ってほしいと多くの方々が希望しています。

合併の後、賃金・処遇は切り下げられ、希望退職で雇用に手をつけ、年金・退職金も削ってくるのではないかという危惧が職場に広がっています。そんな時、全損保脱退を持ち込んで職場を混乱させることは、従業員にとって何のメリットもありません、ただでさえ、深夜残業で疲れ、土・日も仕事に出ざるを得ない職場の中で「これ以上、堪忍してほしい」の声がきこえてきます』 しかし、全損保日火支部執行委員会は全損保脱退を強行採決し、私たちは全損保日火支部の旗を守り、支部執行部を再建しました。私たちも今年2月、京阪神分会を立ち上げ、私が委員長に選出されました。

「分裂・脱退」から半年。みんなが危惧した日本興亜の発足から2週間、直近の職場の状況を報告したいと思います。それは4月2日から始まりました。私の職場はマリンの査定ですが、隣は証券を発行する業務課です。2月の中旬に引越しし、新年度に備えた筈なのにテストランもなしに突入せざるを得ない状況でした。混乱ははじめから分かっていたようなものです。初日から証券は発行できず、時間と人力を投入して何かと間に合わせました。

みんなは昼の食事をとるヒマもないどころか、夜の11時、12時というありさまでした。それが1日、2日では終わらない。会社は業務だけでなく、査定の要員も動員し、人海戦術を展開、土・日も出勤せざるを得ず、職場はみんなクタクタです。さすが会社も本社・システムの応援を求め、アルバイトも含めた総動員体制を敷かざるをえません。

 2日目には緊迫した中でミセスの人が気分が悪くなり、救急車で運ばれました。もう一人のミセスは子どもの風邪から本人が倒れ、1週間休んでしまいました。仕事の中心を担っている仲間が「このままでは身体が続かない。誰かがやめると言い出すと雪崩を打ってみんなが辞めていく」と言う。今、合併直後の職場はこんな極限状態にまできています。
 どうしてこの様な職場を許したのか、忸怩たる思いが胸をかきむしります。営業の職場も契約計上の職場も自動車損害調査の職場ももっとひどい状況はあっても変わることなく、今この様な状況が新会社の職場を覆っています。

 全損保脱退を画策した一柳委員長らは「全損保を脱退するのは一つの組合をめざすためだ。これしか道はない。これまでの基本的スタンスは変わらない」と繰返しました。

 しかし、11月初旬会社は日火支部・日火労組にたいし膨大な内容の合併後の「人事制度」「就業規則」「福利厚生制度」を提案してきました。提案された内容はこれまで興亜に導入されている制度が濃厚に盛られたもので、日火の有利な良い制度が継承されたところは全くありません。日火の社員にとってはそのほとんどが改悪・切り下げるものとなっています。項目だけをいくつか列挙します。

〇新人事制度による全役職・全年代層の大幅賃下げ

〇臨給の賞与化と大幅なメリット制の導入

〇定年60歳、退職金60歳支給

〇50歳社宅定年制の導入

〇裁量労働制の導入と残業料制度の廃止

〇就業規則「懲戒」項目の大幅拡大

 私の場合、課長代理職・50歳ですが、年収で270万の減収。53歳部長で220万円、もっとひどいのは一般職の女性45歳で360万円です。こんなめちゃくちゃな人事制度そのものを日火労組は「減収を3年かけて調整する」というわずかな会社の譲歩で新年度の始まる直前の3月28日に大綱合意し、決着をつけました。私はここに分裂・脱退の本質が見事に示されたと思っています。

 私たちは全損保として職場組合員の期待を代表する組織として奮闘してきました。3月臨給要求では私たち日火最後の臨給とよぶにふさわしい1ヶ月を要求すると日火労組も1ヶ月を要求せざるを得ない。それに対し会社は実績プラス0.1ヶ月の一時金を日火労組に回答してくる。われわれ日火支部には回答を遅らす。ここに成果は労組に与えるが、日火支部には与えない、そのような会社の姿勢が見て取れます。

 4月第2週に入って、私たち全損保日火支部京阪神分会は関西業務部長宛に年度末業務と合併の混乱の職場実態を明らかにし、深夜残業・休日出勤に対し会社としてきちんと対応するよう申し入れ、抜本的対策の必要性を強く求めました。本日、「労働組合の違いはあっても、職場で困った問題があれば、われわれに相談して下さい」の内容で分会役員の電話番号をのせたビラを全職場にまきました。

 私たちは全損保に残った現役組合員だけでなく、全損保日火支部を支援してくださるOBの皆さんが全国で220名を越えてカンパを寄せていただいています。関西でも50名近くに上ります。今日このシンポジウムにも9名のOBが出席されていることに私たちは大変心強く感じています。

 37年前、興亜火災・東京海上など全損保脱退を進めた経営者は何年もかかって分裂脱退を画策し、何年もかかって賃金・諸制度を改定してきましたが、日本興亜はわずか半年で全体系をやり切ろうとしています。そこに経営者と一体になった労組の姿が明らかになってきています。さきほど私は「分裂・脱退の本質が示された」と言いましたが、改めて本当にそう思います。

私はこの状況が進めばますます職場に矛盾と問題が積み重なっていくと思います。私たちは職場の現状から出発し、仲間の要求をひとつひとつ取り上げながら、組合員を増やし、職場変革の先頭に立って奮闘する決意を申し上げ、私の報告を終わります。ありがとうごさいました。                           (大きな拍手)