No.14 1999.10.22.


一周年記念総会、品川正治氏(元経済同友会副代表幹事)

記念講演に、361人が参加!


 大阪損保革新懇は、結成1周年となる10月8日(金)記念講演を開催しました。

 総会は、野村代表世話人による開会の挨拶、記念講演、そして総会アピールを力強い拍手で採択しました。

 元経済同友会副代表幹事、現日本火災相談役である品川正治氏による「どうなる、どうする、損保の未来=21世紀の経済社会と保険業の新しい進路」の記念講演は、現在の損保再編情勢を反映した極めてタイムリーな内容で、参加した361人は静かに聞き入り、多数の感想が寄せられました。


 参加者の感想より


一言一言が頭に残る「忘れられない講演」

 素晴らしい講演会で感動しました。

「損保は今、何処へ行こうとしているのか」「損保の社会的役割は何か」について、代理店制度を守るという点から鋭く意見を展開していったことに共感した。

「他産業がアクセルを踏んでいる今、本業に徹してブレーキ役をする。」これが損保の役割である。

「ダンピングは損保事業の任務の放棄だ」とするどく述べ、私のメッセージとして「平和憲法をもっている国の経済のあるべき姿」「軸足を国家経済におくのか、国民経済におくのか」「軸足は企業から家計に向けた時、はじめてものごとが見える」そして最後に「変革の原動力になっていただきたい」とまとめられた内容の一言一言が頭に残っています。私にとって「忘れられない講演」でした。(Nさん)


産業の使命と誇りを再確認

 損保産業に対しての三つの提言(@ダンピング競争をするなA付加率に社会の容認を受ける努力をB60万代理店の制度の死守を)についてはまったく同感で意を強くしました。問題は以下にこのことを損保内はもちろんのこと広く世論にできるかどうかです。理論的にも、運動的にも私たちの力量が問われているなと思いました。

 これからも「社会のセーフティネット。唯一の産業界のブレーキ役」としてのこの産業に誇りをもって頑張っていきたいと思いを強くし、励まされました。(Nさん)


平和憲法を軸に・・・そこに希望ある未来が

 革新懇へのメッセージで「平和憲法を持っていることに安心していては駄目だ、平和憲法を守っていく経済運営をやっていくのが自分のやりたいことです」と言われたところでは、ちょっと涙が出るくらい感動してしまいました。なんだか明るい未来を感じて勇気が出ました。(K子さん)

声高でなく順々と論されるような語り口は、経済にうとい私たち(?)女性にもひきこまれる様に聞くことができました。

企業の使命感、何処に軸足を置くのか・・・等の基本の考えに意を強くし希望のもてる思いがしました。(W子さん)



{品川正治氏講演要旨}
金融ビッグバンに対するナイーブな対応は従業員と代理店に不安を

 損保産業はかっての護送船団政策の時代は優等生だった。それだけに、金融ビックバンへの対応はナイーブ(素直、素朴)すぎる。

 他産業では十年前に価格競争を卒業したが、この産業は料率自由化のとたんに大幅な引き下げ競争をしている。心を痛めざるを得ない状況だ。しかも、競争で失ったものを回収しようとして、代理店を殺し、社員も殺すやり方を「リストラ」と呼んでやっている。

 まずリストラを行うとすれば、企業社会の持つ贅沢さをこの産業から一掃することだ。

 付加保険料に対して社会の容認もなければ、そういう努力もやらないで、価格競争のしわ寄せを雇用などに向けるべきでない。

 また、現在の損保各社は60万近い代理店に不安を抱かせている。・・・本当に損保の主流は代理店制度を死守するつもりがあるのか・・・と。

 今後も商品を媒介にして参入してくる他産業や資本が絶えずあらわれるだろう。それらと一般の代理店をどう調整していくのか、極めて不安を持っている。

本業に徹し、代理店制度の死守が、現状から脱却する道

 いったい、損保の社会的役割とは何か。

 経済社会にとっての大きな「ブレーキ役」である。リスクを評価、数値化し、社会に警告することだ。ダンピングは、企業の営業政策の範囲ではなく、任務放棄だと言わざるを得ない。

 これからも大きくなるリスクに対して、セーフティネットの役割を果たすのが我々の産業だ。

 社会からお金を引き出して、会社が大きくなる産業ではない。社会の安全を守り、リスクを補償するのだ。

 これだけ大きい日本経済で全産業がアクセルを踏んでいる中で、唯一のブレーキ役は大変な仕事だ。だからこそ本業に徹すべきだ。

代理店制度については、死守する決意と力がなければ、日本の損保の主力とはいえない。

 最近、第一勧業、富士、日本興業、三銀行の統合が報道され、各銀行系列の合併・再編の動機となるのでは、といわれている。

 損保産業では、本業に徹し、代理店制度を死守する姿勢に徹することができるような結集が可能なら現状から脱する道が見つかるだろう。

「平和憲法にふさわしい経済運営」を基本視点に

 日本は平和憲法を持っているがそれだけでは平和は維持できない。

 「平和憲法にふさわしい経済を実現する」というのが、経済同友会を通じての私の行動原則になっている。

 日本のような国は、1%の経済拡大でも国際的な攪乱要因になる可能性がある。そうさせないように、平和憲法下の経済運営はこうあるべき、との理念を持たないといけない。憲法によりかかってはいては失格なのだ。

 「平和憲法にふさわしい経済」とは何か。

 一つは、国家経済に軸足を置くか、国民経済に軸足を置くかが大きな問題だ。

 経済成長期の日本などでは「国家経済の発展=国民経済の発展」と考えられた。今や日本経済はどちらかの道を選択できる内容を備えた、というより、いつも問われる形で進んでいる。経済運営の軸足を企業に置くのか、あるいは家計に置くのか。どちらを平和憲法の国の経済人として行うべきか・・・正面から問うて行かざるを得ない。

 もう一つ、地方の経済をどう活性化するのかという問題がある。地方自治、地方主権を築くために、経済基盤をどこに置くか。

 今、国は「地方経済の活性化のため公共工事に期待する」立場だが、公共工事は結局は中央政権を強める。私は「公共工事複合体」という言葉を作ったが、中央・地方で政治家・官僚と産業がガッチリ結びつき、それを拡大再生産する役割しか果たさない。

一人ひとりみんなが変革の原動力に ・・・品川氏からのメッセージ・・・

 みなさんも、「平和憲法にふさわしい経済運営」という一本柱を立てて考えていけばいろいろな問題は見えてくる。

 過去のシステム・業界秩序は大きく変革されることは目に見えている中で、一つの基本的視点として役立つのではないか。

 みなさんには本当の意味での変革の原動力になっていただきたい。


  講演後開催した二次会には、ほぼ全社から147名が参加。大交流感想会となり

ました。

品川講師は全テーブルを回られ、各テーブルでは「乾杯」の大合唱がわき起こっ

ていました。