No.11. 1999.6.25.


今、笑いはパワーだ、活力だ に大爆笑

落語作家小林康二さんの講演と落語「政やんのリストラ」に135名


 前回の映画「ブラス」と川田悦子さん講演会から3ヶ月、この間損保組合員の3臨・春闘や一斉地方選挙がありました。戦争法案・盗聴法案の議決、国歌・国旗の今国会議決情勢など悪政が続き、ますます革新懇運動の重要性が増しています。6月10日、3ヶ月ぶりの大阪損保革新懇主催「講演と落語」の夕べには135名の仲間が参加、情勢を吹き飛ばすような笑いの渦が巻き起こりました。恒例の二次会には80名が参加、交流・懇談しました。

「釜ヶ崎」の現実に学ぶ ー小林氏講演要旨―

労組専従歴30年の経歴をもつ落語作家で「笑工房」代表の小林康二氏が、講演しました。

「笑工房」はこれまで、労基法改悪、大阪府の財政再建プログラム、銀行の貸し渋りなどをテーマにした新作落語を次々とヒットさせてきました。

完全失業者が342万人にものぼる中、失業問題を新作落語にしようとしている小林氏は、大阪市西成区の「釜ヶ崎」(通称・あいりん地区)に通っています。釜ヶ崎は600メートル四方の狭い地域ですが、2万〜3万人もの日雇い労働者が暮らしています。

「ここの西成労働福祉センターは朝6時から開き、日雇い仕事をあっせんしており、毎朝、日雇い労働者が集まってくる。景気のいい時は朝、手配師が車で乗り付け、声をかけてたくさんの労働者を工事現場まで連れて行くが、今は仕事がないので、「顔付け」(顔見知りで文句を言わず、丈夫でよく働く者を優先する)で特定の者だけが仕事を得て、残り90%の労働者はあぶれる」

その結果どうなるか。「収入を絶たれた彼らはダンボールや空き缶拾いをするが、一日500円が限界。一泊1500円程度のドヤ(簡易宿泊施設)にも泊まれず、路上で暮らすホームレスにならざるをえない。昼は地域の労組やキリスト教による炊き出しに並んでいる」

日雇い労働者にも失業保険はあるものの、二ヶ月で26日働かないと手当ては出ません。

小林氏は、スペインから来たキリスト教のシスター、マリアさん(60歳)と一緒に、冬の夜回りをした経験があります。ホームレスに語りかけ、おにぎりを配って回るマリアさんに「頭が下がる」と言うと、こう言われたそうです。「勘違いしないでください。この人たちは働きたいのに仕事がないから、やむを得ず野宿している。仕事を与えるのは国や自治体の責任ですが、その責任を果たしてないのに、恨まず暴動も起こさず盗みもせず、おとなしく寝ている彼らにこそ頭が下がります」と。

小林氏は、「私たちはホームレスに対して“怠け者”などの先入観を持っているが、それは間違い。彼らに共通するのは“仕事があれば働きたい”の思いであり、だから毎朝センターに来るのだ」と強調しました。ホームレスのテントに入れてもらった際、「面接用にきれいに洗ったカッターシャツと筋のついたズボンがあるのを見て、驚いた」とも言います。拾ったスポーツ紙の求人広告を見て面接に行きますが、住所も電話もなく保証人もいないため断られます。「いったんホームレスになると立ち上がれない」のが実情なのです。

小林氏は日米のホームレスを比較した調査にふれ、日本の場合は高齢者が多く、働く意欲があること、経済的理由でホームレスになることが多いことを紹介。その上で、「ホームレスの中には、昨日今日までサラリーマンだったような人も多い」と述べ、私たちとも無縁ではないと注意を促しました。



「政やん」委員長の団交発言にホロリ 桂 三風さん

雇用状況が悪化しているのは、多くの企業がリストラの名で安易に労働者のクビを切っているためです。労働者は「人間扱い」されていません。しかし、私たちは憲法で基本的人権を保障されています。労働三権(団結権、団体交渉権、団体行動権)を保障した憲法28条に基づく労働組合法もあり、判例では「整理解雇の四要件」が確立されています。

そうした知識を織り込んだ新作落語「政やんのリストラ」(小林氏の作品)を、上方落語界の気鋭、桂三風師匠が巧みに演じました。

小さな自転車メーカーに15年勤めてきた政やんは、企業業績の悪化を理由に解雇を言い渡されます。居酒屋で弁護士にグチをこぼすうちに、安易な解雇はできないことなどを知り、組合づくりを勧められます。

その気になり翌日の昼休み、結成を呼びかけたものの、政やんは組合運動の経験はありません。「労働三権」を北陸三県」、「免責」を「面積」、「未組織」を「味噌汁」、「ユニオンショップ」を「百円ショップ」と言い違えるなど、おかしなことこの上なし。それでも労働者たちは政やんの熱意に応え、組合を結成し、何と政やんは委員長になってしまいます。

社長との団交は緊張の連続。「いつもお世話になっています」と言ってみたり、相変わらずおかしい政やんですが、最後にとつとつと語りだし、ついには解雇を撤回させるーというあら筋です。

三風師匠は阪神と野村夫妻などをネタに参加者をひとしきり笑わせた後、「政やんのリストラ」へ。主人公のトンチンカンぶりに会場は爆笑の連続で、団交シーンでは静まり返る場面も見られました。