No. 5. 1998.12.17.

「ダイオキシン」問題を学ぶ

 去る12月4日、長野晃氏(大阪から公害をなくす会・ダイオキシン研究の第一人者)を招いて「ダイオキシン」勉強会を開催しました。60名の仲間が出席し、1時間半にわたって講演を聞きました。

 塩化ビニール生産規制の方法とか、「肉と魚はどちらが安全か」の質問に「どちらもヤバイ」の回答に場内大爆笑。全員あらためて「ダイオキシン」の恐ろしさと問題解決に関心を寄せていくことの大切さを学びました。


毒性は人工化学物質で最高

 ダイオキシン類は@人工化学物質で最強の猛毒(青酸カリの100〜10000倍)Aこれ以下なら大丈夫という最小値。“閾値”(いきち)がないB生殖・成育・種の保存に障害を与える環ホルモンの一つC自然界で分解されにくく、体内(脂肪や肝臓)に蓄積されるという特性を持つ。


マイクログラム・ナノグラム・ピコグラムとは

 ダイオキシン問題でマイクログラム・ナノグラム・ピコグラムなどの単位が使われています。マイクログラムとは100万分の1グラム、ナノグラムとは10億分の1グラム、ピコグラムとは1兆分の1グラム。土1グラム中1ピコグラムというのは土100万トン中に1グラムのダイオキシンがあるということ、言い換えると大阪ドーム(役100万立方M)に土を埋めた中にダイオキシンが1グラムあるということ、10m×50m×2mのプール=1000立方Mの水に1ミリグラム(1000分の1ミリグラム)のダイオキシンがあるということ、また大気1立方M中1ナノグラムというのは、大阪ドームに1ミリグラムのダイオキシンがあるということ。


安全基準はどうか

 ダイオキシンの摂取基準について日本では84年に厚生省が目安(これ以下なら大丈夫)として「100ピコグラム・体重1kg・1日」としてきたが、欧米の基準の10〜5000倍という甘いもの。WHOは「10ピコグラム・体重1kg・1日」としてきたが、1〜4ピコに見直すと発表、日本政府も見直しに入るとされている。環境ホルモンの安全基準はこれから検討。


摂取状況はどうか

 私たちはすでに毎日約3.5ピコのダイオキシンを摂取しているとされている。内訳は食物92%大気5%土壌2%、食物内の60%は魚介類から。

 日本の都市部の大気中ダイオキシンは欧米都市の約10倍で、ダイオキシン汚染は既に相当進んでおり、世界中どこにいっても逃げることはできない状態。

 もうこれ以上ダイオキシンを発生させない、発生ゼロに向けての取組みが最も大切なのだが・・・、わが大阪は。


ダイオキシン汚染都市、「わが大阪」

 話題となっている能勢郡美化センター周辺の土壌汚染5200万ピコは過去最高の6万倍、通常土壌の数百万、数千万倍、洗煙塔内残留洗煙排水30億ピコ、調整池底泥23000ピコ

 大阪市平野区清掃工場の周辺100M土壌400ピコ、水溝底泥22000ピコ。岬町美化センター、熊取町環境センター、忠岡町クリーンセンター、島本町清掃工場などを調べれば調べるほど大変な汚染が判明。

 大阪市焼9工場のダイオキシン発生量(97年度)は268.21グラム、何とドイツ1国全体で4グラム。


ダイオキシンの発生・汚染の原因、対策は

「発生」産業廃棄物、一番廃棄物の焼却場で塩化ビニールを燃やす際に発生。

「汚染」根本原因は健康安全基準を欧米より10倍以上も甘く決め、ダイオキシン排出の法的規制を10年以上も遅らせてきた政府の怠慢・失政。

 とりわけ、大阪府対策予算2300万、東京45億、埼玉23億、東京の200分の1という立ち遅れ。


何をなすべきか

「緊急調査」

  • 発生源調査A健康調査B焼却施設の周辺調査C最終処分場の土壌・浸出水調査

「緊急対策」

  • 塩化ビニールを分別回収などで燃やさないAダイオキシンを発生させやすい焼却炉の

運転中止・改善、野焼きの禁止B汚染土壌・環境の現状回復Cダイオキシンを含む飛灰・焼却灰の濃度基準の決定

「ただちに検討すべき対策」

@塩化ビニールの規制A排ガスの排出基準を厳しく、基準のない職場環境・健康・土壌・水質・底質・食品などの基準設定B環境調査の徹底C国・府・自治体の調査検査体制の抜本強化D条例制定や住民参加の対策会議設置の自治体への要求など。