2001年10月19日

 大阪損保革新懇第四回総会記念講演録      於本町 大阪府商工会館

講演『顧客に支持される保険文化の構築へ』


 講師 保険ジャーナリスト(有)ナカザキ・アンド・カンバニー代表 中崎章夫氏

講演目次

 はじめに

 “品川講演”をもう一度振り返る

 マーケットが変わる

 損保業界の現状はどうか、今後どうなっていくか

 競争がもたらす“資産の劣化”にどう対応するか

 保険商品が変わっていく

 通販市場はどうなっているか

 営業・社員のありかたが変わる

 営業課・支社の役割も変わる

 代理店が変わる

“こだわり型代理店”をめざそう

 顧客にこだわる保険文化の担い手の誇り


はじめに


 みなさん今晩は。ご紹介いただきました中崎章夫と申します。大阪損保革新懇第4回総会にお招きいただき、お話させていただく機会を得て嬉しく思います。私は昭和48年に大学を出て、損保業界紙に編集記者として入り、編集、取材活動を26年間続けました。50歳になった1999年9月に退職し、有限会社ナカザキ&カンパニーという名前の会社を設立しました。いくつかの知り合いの代理店の方々に案内を差し上げたら「なんだ今度は競争相手になるのか」と勘違いされたほどのわからない社名です。

 私はかねてから現場に基づき、現場に徹底的にこだわる保険ジャーナリスト活動をやっていきたいと考えていました。それはさきほど紹介いただきました保険のメール・マガジン『インスウォッチ』の発行です。毎週日曜日の夜はほぼ徹夜状態で原稿を作成、月曜日の早朝に発行する有料マガジンで、今週の月曜日発行で63号を数えるまでになりました。

現在、誰でもインターネットからタダでいろいろな情報が手に入ります。「メール・マガジンはタダだ」という意識が強い中で有料の保険専門のメール・マガジンを展開していくことはなかなか厳しいことです。ですから、みなさんが身銭を切ってでも読んでいただけるような質の高い情報の提供を心がけています。かつては大きな代理店でも業界紙は保険会社から無料で貰っている所が多かったようでした。会社の経営が苦しくなって物件費がドンドン削られる中でそういう提供の仕方は一掃されてしまう訳ですが、今度は自分でとってくれるかというと「身銭を切ってまでとる気はしない」という方が非常に多く、ガッカリした記憶があります。

 私はこれからの時代、代理店は自ら身銭を切って情報を手に入れることが必要になってくると思います。そうなってこないと本当に顧客のニーズに応えなれなくなる、本物の代理店にならないんじゃないかと思いまして、その仕掛作りをしてみたいと思い有料メール・マガジンの発行に踏み切った訳です。昨年の8月から発刊を開始し、現在購読者は保険会社のスタッフが大体1割、9割が代理店事業経営者ですが、お陰様で徐々に購読者が増えてきています。とにかく、納得して情報の価値に気づいてくれた方が、自ら身銭を切ってとって頂くという状況を広げたいと思って、この仕事を開始して丸1年経ちました。2年、3年目で何とか定着させたいという気持ちです。メール・マガジンの発行の優れた点は事務所がなくても発刊出来るという点です。私と協力者4名の仲間、計5人でインターネット上で原稿・編集を進めています。専従は一人もいない、それぞれが出資し、自らが労働を提供するという形態です。
 今日、ご出席のみなさんもホーム・ページにアクセスしていただければ、『インスウォッチ』創刊号から4号までは無料で見られます。それから、メール・アドレスを入れていただければ最新号1号を送るということになります。さらに、各保険会社のニユースリリースの無料サービスをでやっておりますので、そちらの方もお申し込みいただければ各社の情報が無料でコンパクトな形で手に入ることになります。

 さて、私はいま申し上げました『インスウォッチ』の編集者であると同時に日々の糧は講演や執筆等であります。全国各地の各社代理店会、各地代協、各種共済団体、各地農協・漁協、林業関係、トラック共済、全国自家用自動車共済、中小企業共済などありとあらゆるところから呼ばれるままにお伺いし、いろんな問題提起をさせていただいています。これら以外にも経済雑誌などから頼まれて記事を執筆することもあります。
 私は辛口の“保険ジャーナリスト”とか、噛めば噛むほど味が深まる、聞くほどに、読むほどに味が出るという意味から“スルメ・ジャーナリスト”をめざしています。少し、前口上が長くなりましたが、さっそく本論に入りたいと思います。



“品川講演”をもう一度振り返る

 私は今回の講演に先立ち品川さんの講演記録を含むブックレット『損保の未来』を読ませていただきました。あの講演会の熱っぽい雰囲気が伝わってくるようでありますし、あの当時に提言された多くの内容が今日もっと厳しい局面になってきているなとも思いながら読みました。
 例えば料率競争、料率競争のありかたの内容が幼稚な競争に業界がなっているという問題提起がされております。それからリストラ、何のためのリストラか、本来の意味と違った形で本来一番の企業の宝であるすばらしい人材を萎縮させているようなリストラの進め方、本来生産性とか収益性とかを生む原点である個々の従業員の意欲を高めるどころか、そぐような形で進められているリストラについて厳しく言及されています。さらに企業社会と市民社会の乖離にも触れられ、経済社会の「アクセル化」に対する損保産業の「ブレーキ役」論も詳しく述べられています。それから代理店制度のありかたについても、「損保産業は代理店に依拠してきた。顧客の接点は多くの代理店の方々によって全国各地で毛細血管のように代理店を通じた形で形成されてきた。にもかかわらず、最近は効率化の名のもとに生きた代理店の活動がどうも過小評価され過ぎているのではないか」と締めくくられています。
 実は、私も今後の損保のあり方に関してこの“品川講演”にもある通り代理店問題に強い関心を持っています。つまり、保険メーカーがあって、保険の顧客がある。そのメーカーが提供する商品・製品を組み立て、加工し直し、お客の口に合うように提供する代理店がいる。これからはこの代理店の役回りが大切になっていくと考えているからです。
 結論として私は顧客に徹底的にこだわる新しい保険文化をこれからの時代に作っていかなければいけないと考えています。今までの時代の保険文化のあり方とこれからの時代の保険文化のあり方で何が違うか。それは一部の方が意識していたものが全産業にかかわる方々が意識した形での展開が必要になるような保険文化作りが大事になってくる。その中で代理店の役割が今まで以上に大きなものになってくると思っています。
 特に私は代理店産業のことを『人の生きがい産業』と規定しております。それはお客はいろいろな問題・要求をかかえています。その問題・要求を解決する、身近な問題解決支援業、今様にいえば「エリア・ソリュージョン・プロバイダー」としての代理店の位置付けをきちんとしておく必要がある。これが今日私がお話したい結論部分です。


マーケットが変る

 私の代理店=『人の生きがい産業』論を展開する際、まず第一にマーケットが変るという点から話を始めたいと思います。
 この数年、自由化とか規制緩和の流れの中でこれまでどの保険会社でも同じ値段、商品の中身で販売してきたスタイルからガラッと変り、どの会社でも個別に自由に商品なり価格の設定をしても構わないという動きとなってきました。ようやく損保のマーケットにおいていろいろな商品なり、価格設定のあり方が洪水のごとく出て来るようになりました。 ですから代理店はおろか、保険会社の社員でも自社の商品すらあまりのスピードで変るのでよく分からない、すべてコンピューターに聞かないと分からない状況になってきています。そういう流れの中で現場においては戸惑いや不安も増長されています。私はこれからの損保のマーケットを見ていく際、三つの大きな波がマーケットの行き先を方向づけていくのではないかと考えています。

 その一つは高齢化の進行です。人口構造が少子高齢化になる訳ですが、お客の構成も年代の高い層のウエイトがどんどん増していく。言い換えると、年代の高いところに保険資源のウエイトがかかってくる。ところが現実は商品とかサービスなどは高い年代に対してきちんと提供されているか、この辺が一番遅れているのではないか。保険代理店の世代構成を見ても益々高齢化していく可能性が強い。残念ながら、新しい代理店の人材を育成していくことも難しくなってきている。これまで、各社とも研修生制度に力を入れ、独立志向の強い代理店作りをやってきました。2〜3年の研修期間で3000万円位のコストを投入しますが、その候補生がきちんとした代理店に独立していくかというと非常に歩留まりが悪い。なかなか思うように伸びないし、この制度のあり方そのものの見直し時期にきています。若い戦力になる新たな代理店の育成をどう進めていくか。これから大きな問題となってくるのではないかと思います。

 第二はIT化の進行と代理店のあり方とのかかわりです。一時期は“IT神話”とか言われ、情報技術というものが全ての産業をリードして行く、損保も同じように進んでいくと強調されましたが、最近は裏返し現象として“IT神話”なんて一時的なものだというさめた受け止め方をされている面もあるようです。実はIT革命によって事業を営む企業がインターネットを通じて顧客と取引ができる、したがって大きな効果が出てくる可能性があるといわれてきましたが、いままでメーカーとお客の間でインターネットを通じたビジネスが成功したモデルがあまり出ていない。いまのところはこの様な状況ですが、今後は保険会社と代理店の関係でインターネットを通じてダイレクト計上・申込書直接計上とか、保険料精算業務に活用される流れが強まってきています。IT化がこれからの保険の仕事の流れを変えて行くという動きが出ています。代理店にとってもこのIT化の問題をおろそかにしない、自分のところはIT化をどう進めていくかということが大きな問題になってきています。

 第三はボランタリー社会化です。私はみなさんの「大阪損保革新懇」も考え方としてはこのボランタリー社会化を先取りしている組織形態だと思います。つまり、自分の納得のいくことを同じ目的を持った人たちが手を携えて一致して行動していこうという社会観です。目先の利害のみで動く訳ではなく、自分の生きざまなり、生きがいなり、自分の信念と同じような志を持つ者同士で共同作業をして行くという社会風潮が強まっていくと思います。今までは組織の中におれば「上位下達」で動いて行く、会社におれば何とかなる、大きな組織にもたれかかるという精神構造が強かったのですが、これからの時代は先ず自分自身が納得しない限りは動かない、まさに自らの意思で納得したことで行動を起こすという考え方が強まってくるでしょう。このことは損保の世界で言い換えますと、顧客の側も保険加入の行動パターンが変わってくるということです。今までのように付き合いだから入るということは全くなくなる訳ではないでしょうが、自分で中身を確かめ、自分の利害を考えるという選択行動がより強まっていくでしょう。



損保業界の現状はどうか、今後どうなっていくか

 私は損保経営者はこの三つの波を押え、あるいは展望した保険事業を構築して行くことが問われていると考えています。現状はどうでしょうか。現在の損保業界は激しい再編下にあります。私は“ガラガラ・ポン現象”と呼んでいますが、各経営トップは「今乗り遅れると自分だけ取り残されてしまう」というように必要以上におびえており、“あせり・うろたえ・どの椅子に座るかという椅子とりゲームの状況”とも見えます。
 現在、保険産業では例を見ないスケールでの再編が進んでいます。損保のみならず生保まで巻き込んだ統合の動きも見られ、その成否が注目されるところです。
 損保を中心に見ると、合併を採らず持ち株会社の下での統合を志向したミレアグループ(東海・日動・共栄)、明年の合併で成立する新会社ジャパン(安田・日産・大成)、さらに2001年10月に合併した三井住友海上、これら3つの保険グループは損保分野でいずれも20%以上のシェアを占め、ビッグ3となります。
 このうちミレアのみ持ち株会社の下で、それぞれが独自ブランドでぶら下がる方式をとり、合併によらない形態で、統合メリットがどうでるか注目されるところです。また、統合参加の朝日生命、共栄生命が相互会社のため、株式会社に転換し、統合するスケジュールなどが焦点にとなります。
 損保ジャパンの合併形態は対等というより実質的には序列明確型の垂直合併に近いといえそうです。合併の狙いが明確で分かりやすいため投資家市場の反応はおおむね良好のようです。
 (注、その後海外再保険の巨額支払いがらみで、11月22日に大成火災の破綻、日産の多額の損失を受け、合併時期も来年4月から7月に延期)
 三井住友海上の場合は対等合併のケースといえます。従来激しく争ってきた企業文化の会社同士の合併だけ、企業文化の融合をいかにうまく早く遂行していけるかがカギになりそうです。
 これら3社に加え2001年4月に合併した日本興亜損保、あいおい損保が10%のシェアで続きます。この2社を含め「5大保険グループの時代」ともいわれています。この5社でほぼ9割近くのシェアニなるところから見ても、この間の再編劇の大きさが見て取れます。規模的には見劣りするが生保最大大手のニッセイクループの市場を共有し、このところトップの伸び率を示すニッセイ同和損保の存在も見逃せず、場合により新たな再編の切り札として割って入ることも考えられます。
 こうしたグループか流れから距離を置いているのは富士火災、日新火災など国内社ではわずかで、またAIUなど外社でも独自のスタンスをとるところもあり、今後の動きが注目されます。商品特化で生き残りを計るところ、保険通販専門会社など独自な生き方をめざすところが見られ、保険メーカーは、少数の総合保険会社グループと多数の特化型保険会社に2極化されそうです。
 損保の今後の事業戦略としては、国内各保険グループとも、今後の市場環境を考え、変動リスクの大きな損保事業のみでは収益面で問題とし、生保部門や金融サービス部門強化を図る戦略で共通しています。国内大手生保との提携や統合戦略をとるところもありますが、果たして性急な選択が奏効するかどうか、予断を許しません。
 いずれにしても損保の経営者にとり、経営の健全性を確保し、ユーザー志向を強めるためには内部留保を厚くしなければなりません。一方で、投資家市場から利益の還元を求められ、ROC比率(リターン・オン・エクィティ=株式資本で経常利益を除した数値で、投資家にとって利益率がよいかどうかの指標の一つ)を高くしなければなりません。まさに、この背反する2つの命題をうまく両立させねばならず、損保経営の判断の難しさが集中的に出てきているともいえます。損保事業のみではROC比率は、高い損保でも3%と低く、エクセレント企業の指標とされる10%からはるか遠し、の数値です。異常危険準備金をわが国では法律で積み立てることが義務づけられているところから過剰資本にならざるをえないためですが、こうした中でこの比率を改善していくためにも、生保や金融サービスといった事業に傾注し、グループで連結ベースで展開していく必要があるようで、これらの部門への経営資源のシフトも進んでいくことになりましょう。ただし、新事業への進出は一方でこれまで経験したこともない新たなリスクが出てくることでもあり、こうしたリスク管理体制をどうしていくかも鋭く問われるところとなりそうです。


競争がもたらす“資産の劣化”にどう対応するか

 さて見てきましたように、これからの損保会社はいったい何をめざすのか。損保にこだわった産業構造をとって行くのか、生保などその他分野も複合的に展開し、いわゆる『複合金融サービス』業態に展開して行くのかどうか。そのためには、人的な配置のあり方にも大きく影響してくるし、保険商品のあり方もガラッと変ってくるでしょう。      しかし、現状は相対的に余裕のある会社が料率競争を挑み、他に格差をつけようと動いている程度のように見えます。合併や統合に当たって「合併前に身をきれいにしておくこと」という厳しいノルマ、特に人の問題が具体的目標となって出てきており、かなりしんどい状況となってきています。

 競争が激しくなってくると“資産の劣化”という現象が起こります。資産の劣化では最近の株安などによる有価証券の評価損の発生がありますが、競争による“資産の劣化”は三つ指摘できると考えています。
 一つは、“契約の劣化”です。契約構造の劣化といってもいいかも知れません。
 最近の生保に見られるように経営破綻がこうまで続くと、顧客の関心が、本来の保険商品の中身やサービスでなく、「この保険会社で大丈夫か」ということになりがちです。安心を提供する産業が信用されないのでは話になりません。早くリスクのプロに値する体制を整え、保険会社本来の信頼を取り戻し、市場を正常に戻さねばなりません。残念ながら、生保不信から解約という動きも増えてきています。しかも他の保険会社に契約が移動するならまだしも保険離れすら起こっている点は注目されなければなりません。
 こうした中で生損保ともに、相対的に劣勢にある保険会社目掛けて、優位に立つ保険会社が営業攻勢をかけています。中には行き過ぎて他社の信用リスクを云々するような風評営業に当たる展開すら見られたのは残念です。こうした中で、従来とは違った契約の移動が起こり、劣勢にある保険会社の契約が減少し、大手に集中する傾向がより顕著になっています。最近の損保での大手増収、中堅減少という構図も、中堅で「契約劣化」が目立っていることを示しています。
 代理店の劣化もジワリ進んでいます。顧客の動向に敏感な代理店にとり、取引先保険会社のブランドイメージは無視できません。そのため、特に大型の代理店は、保険会社の経営状態に強い関心を見せており、将来に備え取引先の選別を強化しています。また保険類似の共済の取扱を開始する動きなどもあります。こうしたことの反射現象として相対的に劣勢にある中堅の保険会社の保有する代理店の劣化も一部で進行しています。
 人材の劣化も見逃せません。劣勢にある保険会社から有能な人材が他社や他産業に流れ出ています。これは程度の差はあれ、大手会社でも見られる現象で根は深いといえます。保険産業の担い手の流失は、将来、この産業にとり大きな痛手となりかねません。ちなみに米国では、損保産業は自由競争の結果、効率化が極端に進められ、就職先として学生の人気は低く、有能な人材の確保が困難になっているといわれています。日本の保険産業がこうならないことを望みます。
 こうした保険会社の競争に伴う資産の劣化は、中堅損保の経営者に大手との統合に走らせる動機付けにもなっています。こうした資産劣化を単に大手保険会社へのシフト替えと見て取るのは単純に過ぎます。生損保とも保険産業に対する顧客、代理店、保険会社の社員からの批判、不信の表明としてとらえる必要があります。これまで形づくってきた保険文化そのものが大きな試練にさらされているのです。自らの拠って立つ産業基盤がぐらついている時に自社のシェアが増えればめでたし、などとしか考えられない経営者トップがもし存在するなら悲劇的です。保険産業が未曾有の危機にあるいま、顧客や代理店、保険会社の社員の信頼を取り戻す経営こそが求められています。


保険商品が変っていく

 今まで、今後予測される損保業界の変化についてお話してきましたが、さらに「保険商品が変っていく」ということに話を進めていきたいと思います。
 例えば3年前、東京海上が自動車保険で“TAP”という人身傷害補償という過失の有無にかかわらず自分の保険から保険金がおりるとか、歩行中でも出るといった商品特性を持った商品を世に出しました。2002年2月には東京海上と日動火災が扱い代理店を限定した戦略的な“生損保一体型商品”「超保険」を世に送るといわれています。今までの自動車保険・火災保険・医療・傷害・生命保険といった商品区分を死亡・医療・入院保障という人の損害と車両・家財・建物をひとくくりにする物の損害と費用損害・賠償損害といったリスク単位に区分した商品といわれています。さらにこの保険のための損保版保険料口座の発想が生まれてきています。生保では日生の保険口座とか、明治生命では保険料を預かっておいてその保険料の範囲においてどのようにでも出来るという仕組みを出しています。ただし、この新商品を売ってほしい代理店は会社のほうで決める。売る前提として高いコンサルティング能力を求め、水準の高い代理店に絞る。当面は6万店以上ある代理店の内3000店位が扱うようにするというものです。
 今まではどんな商品でも売りたい代理店は資格さえ持っていれば、誰でも売れたのですが、まさに“ベンツ”とか“ポルシェ”のようなグレードの高い商品はそれなりの対応能力のあるディーラーしか売ってはいけないという考え方と同じです。売るためには研修も2泊3日と受けて頂く。社員でもこの事を知っているのは特別に教育を受けた社員だけですから他の社員に聞いても分からない。この担当者も1〜2週間、缶詰教育されていく。
 みなさんご存じのように、かつて火災・新種保険・傷害保険とかを組み合わせると3%の割引になりますという“パッケージ商品”がありました。“取って一生、取られて一生”とか、長総は“取って10年、取られて10年”というスローガンがありましたが、パッケージ商品が世に出たときは、これをやらなければ将来市場がなくなってしまうという意気込みでしたが、その後うやむやのうちに消えてしまいました。当時のパッケージ思想は種目間の統合の話でしたが、今回はリスクを顧客のニーズに応じ、組替え可能、しかも自動車・火災・医療・生保も含めた形で統合出来ることになるので、対応能力の高い代理店が求められる。東海はシステム・サービスに2年がかりで100億かけていると発表しています。果たしてコンサルティング能力の高い意欲的な代理店がどれだけいるのか。しかし、他社にとって見れば、また悩みの種が増えた、またぞろこういう競争が始まろうとしている訳です。ある保険通販専門会社のある幹部は「東海はベンツを狙うというが、うちはカローラかサニーで行きます、大衆車は価格競争でしょう」と言っています。



通販市場はどうなっているか

 保険通販会社の話の出たついでに通販市場の動きについて触れておきたいと思います。
 最近の『日経』は“撤退する通販会社もあって、業績は思わしくない”との記事を書きましたが、私はあの記事は鵜呑みにしない方がよいと思っています。というのは通販は大都市部ではそこそこ健闘しているからです。
 現在、自動車保険全体のボリュームは3兆6000億円程度ですが、3分の2を自家用マーケットが占めています。分母は2兆数千億あると考える必要があります。
 アメリカンホーム・チューリッヒ・ソニー損保の通販上位3社で合計400億弱というのがこの3月末の数字ですから、2%のシエアとなっています。もともと外資の元受での比率は代理店制度をとっているAIUを含めて3%といわれていますから、通販の2%というのはそれなりに注目する必要があると思います。
 リスク細分型の通販商品は特に、東京・首都圏、大阪・近畿圏の大都市で今後も影響があると見ておいた方が良いと思います。代理店手数料は18%ぐらいですが、いつまでもシンプルな商品にそんなに高い手数料を国内損保で保障出来るかどうか。
 恐らく2003年4月以降は各保険会社毎に手数料は自前で決められる時代になりますが、チャネル間のコスト競争が働くので、いろいろな割引を通じて結果的に手数料水準が下がっていくということを見ておく必要もあります。 手数料率だけではなく別の変則要因が入ることもあります。
 例えば、『ニッセイ同和』では他の種目を取引関係で持っていて自動車も含めると自動車を割引くというのをすでにやっています。つまり、日生保険口座の顧客は1400万件ある訳ですが、すでに600万を超える契約は保険口座の適用対象になっている。この適用対象者が自動車保険に入った場合5%引く、この5%のファンドの2分の1は社費を圧縮して引く訳ですが、残りの2分の1は代理店手数料のカットからと聞いています。10万円の自動車保険の手数料は2割として2万円、割引分の5000円の2500円分は手数料のカットから持ってきますから代理店から見れば10%以上のカットになる。こういう訳です。気づいてみると振り込まれてくる手数料が思ったより少なくなったという話が出てきます。

 損保代理店でいえば今までは商品の流れは自動車保険・火災保険・一部新種保険という物保険中心でしたが、最近は、“生保の数字も出してください”と督励されています。
 今、“1・2・3”と言う掛け声が流行っています。
 それは、代理店は“先ず第一に頑張るのは第一分野(生保)ですよ、2番目に第二分野(損害保険)、3番目が傷害保険や医療保険の第三分野です。この123の順に頑張ってください”。現実は231ですね。売上高でいうと第二分野の損保で圧倒的な基盤を作ってきていますから、ウエイトが一番高い。生保を売るよりも傷害保険などを扱った方が扱い易いのは当然のことです。ですから、生保はそこそこの客層を持っている代理店でも、よほど努力しないと売れないという問題を抱えている。これからの時代は物保険から人やマネーすなわち年金・投資信託などまで商品の組替え、品揃えが広がってきます。今までのように保険の種類によって保険料が色分けされている訳ではなく、資金の流れの観点で見ると自動車保険料も火災保険料も生命保険料も同じになってしまう。ですから、保険料口座の発想というのはまさに保険料を資金の流れとしてとらえる保険会社の顧客の囲い込み運動ということになっていく訳です。



営業・社員のあり方が変わる

 この4月から損保各社では新代理店手数料体系に移行しています。私は“保険会社とインターネットで取引が出来る代理店を優遇しますよ”という手数料の変更の仕組みだと見ています。零細代理店とか小規模な扱い量しか持たない代理店はいずれ手数料は70%位になるようですが、まず1000万以上の代理店はインターネットが使える状況にして、中間の営業支援社員の存在をどんどん減らして行く、営業拠点においてもすでに支社とか営業拠点の機能のかなりの部分は代理店に担当してもらうような試行が始まっています。
 例えば東海のように“ファミリー代理店”構想を作り、今後各地に保険会社の社員が代理店の社長になる形態での直営型の代理店組織を試行実施するということも始まっています。年内に20店位の店舗展開をして行く。保険会社主導で専業代理店への本格的テコ入れが始まったと見ることができます。これからは保険会社の社員で入ったのに、いつの間にか代理店になっていたというようなことが起きてくる。
 今までは企業代理店の保険部門に送り込まれるというのが、比較的恵まれた社員の身の振り方であったようですが、いま進んでいる合併統合は今までの価値観を大きく変えていくことになるのではないか。
 合併統合によって社員を何人減らすのかと表通りで言っていますが、実態は今までの社内の人間関係は崩れ、まったく違った企業文化同士がいっしょになる。そこで“ガラガラ・ポン”が起こるわけですから、自分を良く見てくれた上司が何処かへ消えてしまう。残された部下たちは恐慌状態になる場合もある。上を頼っていた人は失望して辞めてしまうという行動を取る人も出てくる。すでに統合を決めている会社でも支社長クラスでも連鎖反応的に辞めていくケースが結構でています。早期退職制度とかに関係なく辞めて行く。勝手に自己都合で辞めた訳ですからリストラの数には入っていない。経営者にとっては思わぬ“副次効果”が出たぐらいの意識で、要は出るような仕掛けを作ってきているということです。



営業課・支社の役割も変わる

 この様な情勢が進む中で営業課・支社の役割が抜本的に変ってきます。すでに一部の会社がやっているのは宅配業者と組んで、代理店まわりの帳票類・パンフレット・更改申込書などを宅配業者がコンビニに商品を積んで配達するように今まで社員が関わっていたことをなるべく減らすという流れが出てきています。

 代理店業務でみれば20%位が金銭の入出金管理です。毎日のように銀行へ行く、こんなこと他の産業でどこがやってますか、こんな非生産的な仕事の仕方、あまりにも古い体質が永く続いている。また代理店口座とのからみで帳簿点検に営業社員がかなりの労力をかけてきました。この部分は損保として変えなければならない。恐らく今後はダイレクト精算で収支明細書をつけることを不要にしていく。キャシュレス化、口座振替も今後進んでいく。つまり、お金を直接代理店がタッチしないということがそう遠くない頃に実現される。現在、金銭上のトラブルも非常に多いですから、これを未然に防ぐ仕掛作りが必要となってきている訳です。

 いま、話題の外務省の機密費問題で“ロジ”という言葉がよく出てきます。“ロジ”というのは“ロジスティック”で後方支援、軍事用語でいうと“兵站”という意味です。前線で戦う兵隊に食料とか武器弾薬その他を供給する仕掛けですが、この“ロジスティック”という考え方が今、保険産業の中に強烈に入り込んできています。その内容は代理店からの注文などはインターネットを通じて直接保険会社のセンターに出来るような環境を作る。後は帳票類その他についてのデリバリー、配達業務を宅配業者に頼むというようなことにしていく。こうなっていくと保険会社の営業支援社員はいったいなにをするのかという問題になっていく。それはその頭数を思い切って減らしていくという形に持って行こうとしているのが現状です。少数精鋭で市場開拓のノウハウの指導とか、お金を取ってもアドバイス出来るような能力を備えている社員作りがこれからの課題になってくる。

 各社で代理店同士を合併させようという動きが強くなっています。しかし、基本的に代理店同士は対等合併を好むのですが、ボスは2人もいらない訳ですからうまくいかない。ですから序列型の吸収合併型の方を望むことになる。そうなると親になりたい代理店はみんな手を上げる。傘下に入って行かなければならない代理店はあの代理店とだけは組みたくないというような感情的な問題も出てくる。
 いま、どの会社も頭を痛めているのは、親になりたい人は一杯いるが子にはなりたくない、このようなミスマッチが起きています。先に紹介した東海の“ファミリー代理店構想”は保険会社が全額出資し、株式会社を作る。社長は保険会社の社員があたる。でも、この支社には名うての研修生卒の代理店がいる訳です。“やって見せてくれ”と見られている。能力の高さを示し、良い客を見つけて来なければならない。新たな社員のチャレンジの場となるわけです。いずれにしても大変な苦労をすると思います。


代理店が変る

 次に“代理店も変っていかなければならない”という話に移ります。
 強い代理店というのは様々な顧客を有し、その顧客との関係を永く作ってきている訳です。お互いにアクが強い関係でつながっています。私はこれを“灰汁型産業”と呼んでいます。このアク(灰汁)の強さで売っている訳ですから、単に代理店だけがアクが強い訳でなく、お客もうるさい人がいっぱいいる。代理店はお客に教えられ、お客に教える関係、さらにお互い学び合う関係です。立派な代理店さん程顧客から学んでいる。逆に、どうしようもない代理店は自分のことばかり押し付ける。だから、お客は寄ってこない。一方的に喋るのではダメです。「聞き上手」といいますが、商売のうまい人は、自分は問いかけるだけで、お客に話をさせる、お客は相談はするが自分で解答を持っている。どうして欲しいかまで誘導して相手から聞き出そうとするぐらいですからじっくり聞いてあげる。その中でお客に、自分で考えるチャンスを与える。お客が自分が悩んでいることをを聞いて欲しいと思っている相手に、ベラベラ勝手なことを喋られたら自分の喋る時間をくださいということになる。やはり聞き上手の代理店でないとこの商売はうまくいかない。要領のいい方、合理的な考え方の方は目先の利益でやや理屈で動く、あまり成功していない人はこれが好きな方です。
 この商売で成功するのは感動とか、情感とか、心で商売をする心意気です。経済活動というのは一見効率とかで動いているように見えますが、実は人の心のネットワークで動いているのです。保険会社でも代理店を使っているが、ダイレクトでやっているところもある。ところがダイレクトで取れる客層は非常にドライですから条件が変ればもっといい条件を出してくれる会社に変ってしまう。そういう客を必死になって追いかけ回すのが商売としていいのかどうか、考えないといけない。顧客は価値をどこに見出すかで動く。中には価格・値段を第一にする人もいますが、多くの顧客は担い手の信頼感で動いて行くと思います。代理店とはこんな産業です。代理店が単に保険商品の取次屋に終わるのであれば、徹底的に中間コストが切り下げられる。しかし、お客の不安とか将来への備えとか不満とかの問題解決の支援をする専門家として代理店を位置づけるならば、他よりも多少高くてもその方がいいに決まっている訳です。そういう関係にもって行けるかどうかが、カギだろうと思います。
 私の永らくの知合いのシステム業者はコンピューターのソフトとかハードを扱っていますが、客が“とにかく安くしてくれ”といったらオンラインショップか量販店を勧めるそうです。そういう客にたとえ安く売ったとしても、“やれコンピューターがおかしくなった”とか、“通信環境が上手く設定出来ないから頼む”とか、“こんな仕事をやりたいのだけど何かアドバイスしてくれ”と言うに決まってますから本当の商売とはいえない。自分は問題解決支援業者としていろいろな問題をクリアーしてきた専門家なんだ、自分が仕事をしていく上でどうしてもこの人と付き合いたいという客を見つけて行かなければ先はないと言っています。ただ単に取次屋さんであれば、メーカーから直に購入した方が安くなってよい。そうでないなら付加価値を付けていく。保険会社がいろいろな商品を出しているが、新商品の取次屋になるだけではダメです。お客の実情、リスク実態に合った形で、組み立て直していく、しかも同時にマイナス情報を含めたアドバイスをしてお客の悩みを上手く解消してあげる様にならないと本当のビジネスにならない。

 通販と対面販売の問題もあります。私はこれからも地方では通販は伸びないと思います。ローカル市場程人間関係を大事にするので、顔の見えるサービスにならない限り、いざという時に困ります。私は顧客満足の基本は「いざという時思い出すあの顔」だと思います。 皆さんの親族の誰かが倒れるとか、入院したり、ケガをした時に誰に相談するかという時、どなたを思い浮かべるか。いざというとき、やはりリスクに強い専門家の顔を思い浮かべると思う。そういう顔に代理店がならないといけないと思います。


“こだわり型代理店”をめざそう

 社会一般には損保の商品は代理店で売って行くのが当たり前という意識があります。ところが代理店といっても、専業でやっているプロ代理店もあれば他に仕事をしながら代理店の看板を掲げている人もいる。最近は代理店を通さない通販や銀行の窓口販売も出来ましたし、自動車のディーラーや修理工場でもガソリンスタンドでもやっている。どの企業にも別働体があるし、生保の営業職員も損保の代理店を取り組んでいる。いわば一億総代理店の形態になっている。その際、専業代理店と他のチャネルとの差は一体何だろう。この点が意外にぼやけています。プロ代理店の定義自体あいまいです。プロの代理店の話を聞いていると“自分達は被害者だ”という意識が強すぎる。陥落間近かな城を守っている守備隊みたいなもので、“外堀も埋められ内堀も埋められ、矢倉に火がかかっているぞ、どうしよう、何とかしてくれ”みたいになっている面があります。“規制してよ”“攻められないようにしてくれ”で本当にそれでいいのだろうか。
 プロ代理店の強みは一体何なのか、優位性は何なのか。「保険会社はプロ代理店の能力に合わせたもっとレベルの高い商品を開発してくださいよ」「他のチャネルでも扱えるような、どうしてこんな野暮な商品しか作らないのか」などもっと自分達の客を守るためには「こんな商品が欲しい」「こんなサービスが欲しい」「こんなサービスはいらない」ということを積極的に言って行けるようにならないといけない。そうでなければプロ代理店でなく“フロ(風呂)代理店”になってしまう。フヤケタ代理店にしかならない危険性もある。保険会社も代理店に依拠してお客との関係作りをしている訳です。代理店というのは市場のフィルター役です。お客のいろいろな要求などを一旦代理店が受け止めて、整理して保険会社につなげていく環境を作っている訳です。
 このフィルター役を直接コールセンターがやろうとするとコールセンター要員に一定期間教育・訓練が必要になる。とても間に合いませんから、それぞれの専門分野の業務担当者を後に置かなければならない。でも、24時間専門分野の業務担当者を後に配置できるような対応をどの会社がやっていますか。よくよく考えて見れば、夜どうし働くなんて習慣ってまともでないですよね。そういうことを進んでやられる人材の確保は実際は難しい。24時間勤務というのは結構無理がありますから、そういうことに何時でも対応出来ますよとめったに来ない客のためにに優秀な社員を貼り付けられるかという問題も出ている。 沖縄は人件費が安いということと色々優遇措置もあるので、沖縄にコールセンターを置く。地元で対応しているように見せるため、それぞれの方言を喋る人を配置している所もあるようです。当初は身近にいる人が受け答えしているように思うが、よくよく聞いて見ると、違う。
 私はやはり「顔の見えるところでキッチリしたサービスを受けたい」という客が多いのではないかと思います。先だって通販手法で電話・メールで自動車保険の見積依頼を受け付けた大手損保代理店を訪問しました。この1年200件位客から相談があったが、内27%程度を成約したとのことでした。代理店が通販志向でメールや電話で対応する形で上手くいっているのはアフターケアがしっかりしているからです。メールを受けたその日の内にメールで見積条件の対応をすると同時に郵送で翌日朝1便でお客から求められた条件の見積書と同時に自分ならこうするというパターンの2パターンを送る。それが着く2〜3日後に必ず、夜8時以降に電話を入れる。お客は、他にも見積依頼をしているのを承知の上で「私どもの見積届いたでしょうか、何番目でしょうか、他からも来てますか」と言うと、たいがい「1番目です」という。「では、他からも見積もりが来た頃に改めてお電話差し上げます」といって電話を切るそうです。2〜3日後にまた電話をする。それを繰り返す、その間にお客から逆相談を受けた時はしめたもの。脈のないお客はぞんざいな対応をするので直ぐ分かる。そうした客は深追いはしない。電話で他社の証券をファックスで入れてもらう。そうすると、対面でお会いする時は申込書に印鑑を頂くだけ。
 どの商売でもそうですが、メールで見積もりを出す、自動販売機のように客がこれが欲しいと思ったらポッと出てくる。これだけでは代理店の役割はない。客からキメ細かく相談に乗れるいい相手が見つかったなと思わせられるかどうか。しかも、通販の客は昼間働いている人が圧倒的に多い。大体通販の客筋というのは30代前後の方が多い。中には女子学生なんかもいることもある。自分の主要な客層というのは大体自分の年齢のプラスマイナス5歳、大体この辺へ集中しています。だから、年齢の高い代理店に生保は売りにくいというのも分る。40歳以前に入るのが9割ですから。若い人でないとお客にならない。つまり、付き合っている相手が同世代なら心を許すが、高いと親父からガミガミ言われている、説教されている気になるとお客もひるむし、嫌がる。断ると悪いのかなとか、きっとがっかりされてどうされるのかなとそういうのが疲れる。そういうところを上手く見極めた対応が必要になってきます。

 “こだわり型代理店”のモデルというのはお客に対してキチンと意向が聞ける耳を持っているかどうか、もう一つは、自分の夢を持ってもしくは夢やロマンを明確にしている代理店かどうか。素晴らしい代理店は地域においても素晴らしい存在でもある訳です。つまり、お客がお客を連れて来るという関係は、その人に託して間違いないから連れて来るのであって、この人を下手に紹介したらなにを言われるか分らない、という人は絶対に紹介しません。客が客を呼ぶという関係作りを上手く構築出来ているかがポイントだと思います。



顧客にこだわる保険文化の担い手の誇り

 最後に、3年後5年後、保険代理店はどうなっているか。それは分らない。分っていることは一つあります。それはお客さんに徹底的にこだわる代理店の知性というものがこれから発揮されるかどうかが尺度となることです。同時にどんなに素晴らしい代理店でも後継者が必要な時期が必ず来ます。後継者を自分の元気な内に見つけておくことも大事になります。同時に保険会社の社員でも思い半ばにして組織を離れざるを得ない局面になる方々が相当出てくると思います。その培った経験なり知恵を生かすような仕組みを作って行かなければならない。保険会社に対してイエスマンになるような代理店はろくな代理店になりません。時には会社の意にそわない立場になることもある。いわゆる独立性というのはどこからの独立か。保険会社からの独立です。独立といってもいがみ合い、喧嘩をするということではない。自分のやるべきことは自分でするということです。客のことは自分がキッチリ面倒を見る姿勢をとる代理店ほど保険会社のブランドで商売してはいけない。代理店のブランドで商売する。私は名刺をもらっても保険会社のマークや名前が先ず目に飛び込んでくるような名刺を作っている代理店はあまり評価しません。これでは保険会社の社員と同じみたいなものです。代理店がお客のことを思うなら自分のブランドに誇りを持つ。客が取引先の保険会社によって対応が変るようではたかだかしれた客層でしかない。自分の存在を客の支持を得られるようにして行くのが、代理店の基本スタイルにならないといけない。
 これからの代理店市場の定義は「本当のプロ意識を持った代理店の方々がこの市場で責任を持って対応して行く、またそういう代理店を支援して行く社員の質も高めなければいけない」ということになると思います。社員としても志の高い代理店を支援する仕組みに切り替えて行かないとこの保険産業そのものがみっともないぶざまな格好になりかねないと思っています。

 最後に結論付けて申し上げたいのは、現実的な顧客との関係作りが基本だということです。私もメールマガジンを出してやっていますが、ITとか、インターネットはあくまでも手段です。「情報は人にあり」。人との付き合い、いろいろな貴重な情報・知恵を学ぶ機会があります。ですから、自発的な組織、何者にも拘束されない組織、目先の利害や理屈で動かない、すなわち「利動」でなくて「感動」だということです。
 私はこういう人間関係作りが基本になっていくユニットが社会の中でどんどん出来てくるといいと思います。NPO、NGOのように非営利団体、非政府団体などの自発的な人間の集団が経済社会の中で果たす役割は今まで以上に増えてくると思います。今の政府の動きなど心配な社会の動きは多々ありますが、そういうことに悲観するのではなく、一人一人がどういう社会を作って行くかということを自発的に同じ志の方々がユニットになって強め合って行くことによって初めてもっと過ごし易い、暮らし易い、夢が描けるロマンが描ける社会になっていくのではないかと思います。
 私はそのような社会作りのためにも大阪損保革新懇の奮闘に期待します。ぜひ皆さん、頑張ってください。
 どうもご静聴ありがとうございました。

(大きな拍手)