2003.6.11に開催した「ストップ!労働法制改悪」学習集会での3つの職場からの報告です。
  
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 目次 報告1 「働いてよかったと思える会社」「誇りと働き甲斐の持てる会社」に・・・あいおい損保 
     報告2 深夜残業・休日出勤・サービス残業が代名詞のような職場    ・・・日本興亜損保
     報告3 働く者にとって『合併しても何一ついいことがない』   ・・・損保ジャパン



報告1 「働いてよかったと思える会社」「誇りと働き甲斐の持てる会社」に・・・あいおい損保

 あいおい損保の畑尻です。あいおい社の職場実態を報告させていただきます。
 あいおい社はご存知のとおり、旧大東京火災社と旧千代田火災社とが合併して2001年に発足した会社です。
 私たちは、合併による将来不安はありましたが、きっと良い会社になるし、良い会社にして行こうと希望を持ち期待したものでした。
 しかし、現実は、合併前から個社ベースによる早期退職制度の導入にともなう職場の混乱があり、賃金カットによる我慢の強要がありました。
 合併当初は、システムが統合されていないばかりか、営業職場ではいきなり内務センターという新制度が導入され、事務の大混乱を経験し、代理店・顧客に多大な迷惑をかけました。
 損調職場でも、システム問題や人員不足により先の見えない劣悪な職場実態でした。
 その結果、女性でも、22時23時は当たり前、終電も無くなりタクシーで帰ったりといった実態があり、そのため体調を崩し、退職を余儀なくされたり、長期欠勤する従業員が多数出ました。
 家庭を犠牲にした長時間過密労働でようやく職場が落ち着きかけたとき、通常の再保険をかけていれば問題なかったはずが、誰が聞いてもおかしいと思う金融債保険を掛けていたため、米国テロによる1400億円にものぼる巨額損害が発覚し、社会的に大きく信用を失墜し、社外格付機関から格下げされ、営業現場は大打撃を受けました。
 システムの問題・事務の混乱・テロによる巨額損失、これらはすべて経営施策の失敗から引き起こされたものです。
 同じくテロで巨額損失を出した日産火災の役員は退職慰労金を返上したと聞きましたが、あいおい経営は、5億とも6億とも言われる退職金をもらって会長が退任し、残った役員は少しばかりの役員報酬をカットして「経営責任をとった」とお茶を濁しています。その一方で私たちにはさらなる犠牲を強いてきています。
 具体的には残業料のカットと今次春闘における賃金削減回答です。
 残業料カットの問題で言えば、法定外時間労働に対して、(課長)代理層は月5時間、それ以下の層については月10時間以内に抑えるよう強烈に締め付けてきました。
 残業料を多くつけている従業員に対して個別に呼び出し「評価に影響する」「昇格にひびく」などと脅したりしているとの話が全国から聞こえてきました。
 少ない人員の中で一生懸命働き、とうてい定時に終われるはずのない仕事量の下、何とか仕事をこなそうと休日出勤までして会社を支えている従業員に対して絶対に許されることではありません。
 あいおい社は、2003年3月期、経営施策の失敗による様々なアゲインストの風を乗越え、わずかですがコンバインドレシオで100%を切り、利益を出しました。私たちのがんばり以外の何物でもありません。
 しかしながら、大手・中堅各社とも定昇・臨給に実績をこたえる中、あいおい経営は、今次春闘で賃金削減提案を出してきました。その最大の理由が「事業費率が大手社より高いので料率競争に負ける」という理由です。
 しかし、今回の削減提案は、額で言えば30億、事業費率に与える影響はたった0.2%であり、すでに3〜4%の差がある大手社との比較で言えばほとんど影響の無いものです。
 あいおい社は個社時代から、事業費率の低い海上保険などほとんど無く、構造的に事業費率が高い会社であり、そのことをわかりながら合併を決めたのは経営です。そういう意味から、(高い事業費率は)まさに経営責任そのものであり、そのことを従業員に責任転嫁しているとしか言いようがありません
 さらに言えば、全体の事業費率が、自動車とか火災といった個別の保険種目の料率認可に関係があるとは思えません。
 会社のねらいは、まさに、我慢につぐ我慢を受け入れる・言いなりになる従業員づくりであり、そのことのために論をはり、今回の提案を出してきたとしか思えません。
 6月5日の団体交渉でも会社回答は変わらず、私たちは6月6日に整斉と定時退社ストを打ちました。
 今、あいおいの職場には、自らの責任をあいまいにし、すべての責任を従業員に押し付けようとする経営に対する怒りが渦巻いています。
 6月9日に臨給の支給明細書が届き、6月10日には不当にも会社提案通り削減された臨給が振り込まれました。
 昨年と比較してあまりにも削減された臨給を目の当たりにして、本当に情けない気持ちです。
 今の経営の出方は、人より物やシステムが大切であるという(会社の)考えを鮮明に表しています。
 大阪では新しい大阪支店ビルに120億円かけると聞きますし、今、テナントで入っている大阪三菱ビルは年間6億円もの賃貸料がかかっていると聞きます。本当に無駄な経費です。
 きれいなビルで働きたいという気持ちはありますが、処遇を削られてまでそう思う人はいません。
 会社は、「05年には協会長会社になるので名実ともにリーダー会社に相応しく」と言っていますが、いくらビルが立派でも、そこに働くものに意欲が無ければ会社は成り立ちません。
 職場は今、たんなる賃金闘争ではなく、あいおいを「働いてよかったと思える会社」「誇りと働き甲斐の持てる会社」にしていこうと意識が高まりつつあり、全損保労働組合に結集してたたかっています。そのことを報告して、私の職場実態報告とさせていただくとともに、ここにお集まりの損保に働くみなさんにも応援をお願いし発言を終わります。



報告2 深夜残業・休日出勤・サービス残業が代名詞のような職場・・・日本興亜損保

 ご紹介いただきました日本興亜損保に働く田崎と申します。
 私は2年前の合併直後に開かれた大阪損保革新懇の職場シンポジウムで、日本興亜の発足から2週間の職場状況を次のように報告しました。
 「それは4月2日から始まりました.私の職場はマリンの査定ですが、隣は証券を発行する業務課です。2月の中旬に引越しし、新年度に備えたはずなのにテストランもなしに突入せざるを得ない状況でした.混乱ははじめから分かっていたようなものです。初日から証券は発行できず、時間と人力を投入して何とか間に合わせました。みんなは昼の食事をとるヒマもないどころか、夜の11時、12時というありさまでした.それが一日二日では終わらない。会社は業務だけではなく査定野の要員も動員し、人海戦術を展開、土日も出勤せざるを得ず、職場はみんなクタクタです。さすが会社も本社・システムの応援を求め、アルバイトも含めた総動員体制を敷かざるを得ませんでした。
 2日目には緊迫した中で、一人のミセスが気分が悪くなり、救急車で運ばれました。もう一人のミセスは子どもの風から本人が倒れ、1週間休んでしまいました。仕事の中心を担っている仲間が「このままでは身体が続かない。誰かが辞めると言い出すと雪崩を打ってみんなが辞めていく」と言う。今、合併直後の職場はこんな極限状態にまで来ています。」
 そしてこの2年間、職場は落ちついてきたかのように見えます。しかし、それは職場で働く者・私たちの犠牲の上に成り立っているとしか思えません。
 因みに、先ほどの報告で、子どもの風邪から倒れ1週間休んだ一人のミセスは、実は、切迫流産でした。彼女は1年後、「もう働く気力がなくなりました.子育てに専念したい」と言って退職していきました。そんな仲間を多く出してきました。そして希望退職では、多くの仲間が泣く泣くこの会社を去っていきました。
 2年半前、全損保日火支部を分裂脱退させ、大半を労連に持っていった日本興亜労組は労使共同で「長時間労働改善検討委員会」を発足させ、その第一の取り組みに社員の意識改革を掲げ、「退社時刻ガイドラインの設置、21時消灯運動」などを推進していますが、果たして2年前と比較して職場は改善されたのでしょうか。
 一見、表面的には極限状態を脱したかに見えますが、内実は超長時間残業や休日出勤があいかわらず蔓延しています。
 ここに、2通の社内メールをプリントアウトしたものがあります。
 一つは、2003年5月3日(憲法記念日)の午後11:53の発信です。書き出しは「お疲れ様です」。まさに彼の本当の気持ちでしょう。最後のところには「休み明けにまた打ち合わせさせて下さい。ようやくGWに突入できます」と結ばれています。この彼は、5月3日に休日に出勤し夜中まで仕事して、やっとのこと5月4日・5日をGW休暇とすることができたのが読み取れます。
 もう一つは、2003年5月12日午前1:39の発信です。出先の営業職場からです。ちなみに5月12日は月曜日です。ということは、彼は5月11日日曜日に出勤し、日付がかわって夜中の1:39にメールを送信してきたことがわかります。彼はこの日どうしたのでしょうか。一度自宅に帰って、少し眠って、朝いつもの月曜日の朝の顔をして出勤したのではないかと思います。
 この二つは、今の日本興亜の職場実態をあらわす氷山の一角であることは間違いありません。おそらく、我々の目の届かない、我々の耳に入ってこない、もっとひどい実態が蔓延しているように思います。その証拠に、将来への夢を抱いてこの会社に入ってきた青年が、展望を失って、一人また一人と辞めていっているのが目につきます。
 この実態を作り出しているのは、まさに能力給制度であり、裁量労働制なのではないかと思います。
 休日出勤しても、深夜まで残業しても、すべてサービス残業。
 非組合員の管理職はもちろん、課支社長クラスは、残業料込みの資格給で、残業料そのものの考え方自体がない。
 そして課長代理クラスでも裁量企画手当と称して、営業で月91,000円、内務・損調で就き55,000円でにぎられてしまっています。
 一方、私たちは,一般職や業務職、そして裁量労働制の適用のないところでは、労働組合として実態通りの残業量取得をめざしてきました。
 取り組みの中で、労組の若い仲間に「実態通り残業をつけよう」と組織し、実態通り出させたところ、課長が若い仲間を呼び「あなたは労働組合が違うから同じようには取得できないよ」と書き換えを命じられたことも経験しました。
 職場の仲間は5時間10時間の残業量取得の中で、支部組合員の中には40時間50時間と実態通り取得している者もいます。
 職場の仲間をはげましながら、残業量取得を前進させ、サービス残業根絶に向け、労働組合として、職場革新懇としての奮闘が求められています。
 特に私自身も含め、裁量労働制適用の返上、そしてやった残業は実態通り取っていく、この運動を一人でも多くの仲間と団結しながら前進させる。このことが労働組合・革新懇の存在意義が問われるように思います。
 次回、もし職場からの発言としてこの場に立つ機会があるとしたならば、深夜残業・休日出勤・サービス残業が代名詞のような日本興亜の職場がこんなに変わりつつあるという報告をできるよう、労働組合として、日本興亜職場革新懇として奮闘する決意を申し述べて日本興亜からの報告とします。





報告3 働く者にとって『合併しても何一ついいことがない』 ・・・損保ジャパン

 損害保険ジャパンの小畑です。
 合併した職場がどうなっているか。はっきりしているのは、どの合併をみても、働く者にとって『合併しても何一ついいことがない』ということではないでしょうか。
 私の働いている「損保ジャパン」も例外ではありません。確かに合併して会社は大きくなりました。しかし、企業としては大きくなりましたが、そこで働く従業員は企業規模に反比例するかのごとく、大変劣悪な状況が日々深行しているといえます。
 絶対的業務量の増加と目標ノルマの徹底追及、成果主義賃金のより一層の強化で、超長時間・超過密労働が全社員におそいかかり、過重労働で職場は疲弊しきっています。そういう中で、心身ともに体調をくずし、長期療養で休んでいる仲間も増えています。今、全国で長欠している仲間が300人もいると聞いています。現実に職場で倒れた仲間もいます。驚くのは、在職死亡者の訃報が、毎月報じられていることです。会社の人事をして、「うちの会社は社員のほとんどが、どこか悪くて薬を飲んで仕事をしている状態です」と言わざるを得ない実態となっています。
 但し、人事が言いたいのは、「だから病気は当たり前」「病気くらいで文句を言うな」ということなんです。こんな実態ですから、当然ながら、男女を問わず、会社を辞めていく仲間も後を立ちません。女性・業務職は年間500人の退職者がいると聞いています。本当に残念ながら、いま職場は、『体を壊すか、会社を辞めるしかない』状況になっています。
 次に残業の問題ですが、現在、総合職は全員、毎月の賃金に、法定内・法定外合わせて40時間分の残業料が支払われています。すなわち、残業しようがしまいが、40時間分の残業料が毎月支給されている訳です。何故か。それは、もともと総合職の40時間以上の残業は当たり前なんだから、初めから賃金に組み込んでやるから、残業という概念を捨てて働けということなんです。ですから、早朝出勤も深夜残業もやって当たり前、断れない。残業料をさらに取得するなんてとんでもない。結果、労働組合の調査でも、「残業料請求無し」が全体の97%となっています。まさに、いま参議院で審議されている『裁量労働制』が、すでに職場で行われている訳です。女性・業務職に対しても、36協定が歪んで徹底をされ、年間150時間以上の残業料は取得させない運営がまかり通っています。 最近会社は残業を減らすために、「退社時間目標の設定と生産性向上の徹底」と称して、『限られた時間の中で主体的・自律的に働き、成果を出す』という方針を出しています。能力開発・行動改善・働き方の変革で『強い社員づくり』と『仕事の生産性向上』をはかり、残業時間を減らして、成果は出させるというものです。まさに『残業は減らして、密度と能力を上げて、成果はきっちり出せ」ということです。「それが出来ない奴は辞めろ」と言わんばかりです。
 これらは、全て、2005年度・事業比率31.3%を達成するためです。この目標値は合併前からの目標値で、合併時の収入正味保険料をベースにして立てられています。ところが実際に合併して、収入正味保険料が予想額より下回っているのが現実です。「分母が減っているのに事業比率は変えない」ということは、分子を減らすしかない。すなわち、当初約4000人の人員削減目標が何千人になるのか、賃金体系の改悪で人件費をどう減らすのか。会社は、31.3%の事業比率以外の数値については全く明らかにしていません。この4月の拠点の統廃合で大量の人減らしを行い、7月には次の統廃合による人減らしも予定されています。そして、『希望退職』をつのるという噂も流れています。会社はどこまでも従業員への皺寄せで企業利益拡大を計ろうとしていますが、こんな会社は長続きしないと思います。数年後には、またどこかと合併しないと持たなくなるんだと思います。 その度に、多くの従業員が切り捨てられ、使い捨てにされる。そんな会社のやり方は絶対に許せません。
 私は、この「損保ジャパン」を、本当に『働いていて良かった』『働きがいのある会社』『誇りの持てる会社』にしていきたいと思っています。そのためにも、労働組合、企業、職種・立場の違いを越えて、この革新懇に集まる仲間のみなさんと力を合わせて、奮闘していく決意を述べて、職場からの報告といたします。みなさん、ともに頑張りましょう"